ゼノギアス
- ミルク[1871字 約3分]もし真夜中まで眠れなかったとしても、ユグドラにはガンルームくらいしか行くところがない。 ユグドラはボクにとって本当に...
- ファティマ家の人々[3626字 約7分]「――あれでブレイダブリクを爆撃する気だな!」 遥か高みにキスレブの最新鋭戦闘機『ゴリアテ』の機影が認められたとき、バ...
- 愛しいもののために[682字 約1分]バルトは砂漠に出た帰りには、何か土産物を必ず見つけることにしている。アジトで親兄弟の帰りを待っている子供たちと、『つい...
- びねつ[5395字 約10分]「若、みっけ」 出し抜けに鈴の音のような声が飛んできて、バルトは大きく身じろぎした。完全にひとりのつもりだったのに。お...
- ふたりの熱暴走[3969字 約7分]体を揺するバイクのアイドリングは、心臓の鼓動によく似ていた。逃げ道を全力疾走して振り返った時の、踊るような動悸そっくり...
- シュークリーム[872字 約1分]思わずあーあ、という声を上げたら、バルトがすぐにうるせえなと言い返す。口元はクリームまみれで、ひどい有り様だ。マルーを...
バルマルセルフ10のお題
- 目覚めよと呼ぶ声が聞こえ[2936字 約5分]フェイの断片的な記憶によれば、ロニ・ファティマはバルトが想像するよりも遥かに気さくな人物であったらしい。曰く、口調は穏...
- 手のひらを硬く繋いで[1909字 約3分]旅立つレンマーツォの機影は、ついに青空に解けて見えなくなる。「大丈夫だよ、きっと帰ってくるさ」 不安げな表情を隠そ...
- 剥き出しの傷[1205字 約2分]いい加減、マルーの奴が自分を『ボク』なんて呼ぶのが何とかならないもんかと思うんだよ。あいつは目下俺の子分を気取っている...
- 忘れえぬあの日の記憶[1233字 約2分]日の光の輝きの中で見たマルーの笑顔がいつのものだったか、バルトははっきりと覚えている。湖から吹いてくる清々しい風を胸一...
- この身に流れる血は赤い[6039字 約12分]めき、という、肉のひしゃげる音を、ボクは一生忘れないと思う。耳にこびりついて離れない、忘れることを許さない生々しい音だ...
- 軋む歯車[1552字 約3分]なんでこんなことになっちゃったんだ……ベッドの端に腰を下ろすマルーは歯噛みした。懐かしいはずのファティマ城の尖塔に監禁...
- 遠い日の古き暁光[1524字 約3分]「おいマルー、もう行くぜ」 バルトが投げかけた声に、彼女は振り返った。その表情は明らかな哀惜の情が滲んでいる。片手には...
- 優しさがすれ違ってゆく[2664字 約5分]そのぬくもりが背中に重たい。 脱力したマルーの体は、バルトの背中にずっしりと堪えた。苦しそうな浅い吐息が耳元を掠める...
- 愛の言葉に[1683字 約3分]「ご先祖様のギア、もう動かないんだね」 ガンルーム階下の自販機の前、あまり快適な心地ではないソファで、安心したような残...
- 青い瞳はまだ開かない[1072字 約2分]お休みマルー、と呟いて細君を顧みると、彼女はすでにすうすうと寝息を立てて寝入っていたのであった。夕餉を済ませてから眠た...
砂上に紅月は二度昇る
バルトとマルーの往復書簡から始まるED後の話。約55894字の中編。完結済み。
- 001[1147字 約2分]マルーへ まともに手紙なんか書くのは初めてだから、どうしたらいいのかよく分かんないんだけどな。シグや爺が書け書けって
- 002[1409字 約2分]若へ 久しぶり! 元気だった? ボクは元気だったよ! ずっと心配だったんだよ、若はどうしてるんだろうって。又聞きじゃ
- 003[1297字 約2分]マルーへ この手紙が届く頃には、即位式は一ヶ月後だな。城の中もすっかり浮き足立ってて、当事者の俺としてはうんざりして
- 004[3896字 約7分]バルトは羊皮紙に置かれたインクが乾ききったのを確認し、それを丁寧に丸めて筒に収め、口を封蝋で閉じた。ファティマの王バル
- 005[2921字 約5分]僅か三年で政務に耐え得る、王の即位に耐え得る、王政国家の成立に耐え得る施設を成すとは、それだけで驚くに足る事実だ。失っ
- 006[2796字 約5分]アヴェ砂漠のからりとした暑さは、かえって好ましいように、マルーには思える。 ニサンの夏は、アヴェから吹く南風が海峡の
- 007[3585字 約7分]マルーのラクダの輿がブレイダブリクの砂を踏んだとき、ああ、と彼女は直感した。 この砂の一粒ですら、若に通じている。ア
- 008[2908字 約5分]砂漠の太陽はやがて中天を落ち、宵が星をまたたかせた紗をそっと降ろし始める。 砂漠の民は夜になってからが本番、祭りはこ
- 009[2199字 約4分]「二人で話すの、久々だよね」 マルーが笑みを浮かべながら、大きな扉を潜る。シグルドは何やらの仕事が残っているとかで、一
- 010[1241字 約2分]何だかよく眠れなかった。頭がしゃんとしてくれなくて、ついつい布団の中でぐずぐずしてしまった。まぶしい朝日に目を射抜かれ
- 011[2261字 約4分]時を知らせる鐘塔が、アヴェの城下に広く鳴り響いた。この日の鐘は、単なる時刻を知らせるものではない。新たなる王が誕生する
- 012[3111字 約6分]それからは会食が始まり、マルーはバルトと話すことなどできなかった。そもそも、たくさんの祝福の声に応えるのが精一杯で、食
- 013[2467字 約4分]酔いと疲労とくちい腹を抱えてようよう舞い戻った私室は、バルトが想像していた様子と少しだけ違っていた。なぜだか酒精に満ち
- 014[7509字 約15分]王になって初めての朝は、シグルドが部屋の扉を叩く音で目が覚めた。昨日までとさして変わらぬ、当たり前の朝である。唯一違う
- 015[7315字 約14分]「若、大丈夫ですか?」 シグルドがそう声をかけると、バルトはようやくはっと我に返ったらしかった。驚いたように目をぱちく
- 016[3612字 約7分]城壁の向こうから吹き込む風が、未だ冷めやらぬ熱狂に包まれている。低い低い地響きのような唸りに、鳥が甲高く鳴くような音。
- 017[6220字 約12分]ブレイダブリクの朝は規則正しくやってきて、マルーはきちんと予定通りの時刻に城を発つことになった。冷え切った砂漠に差す暁