剣士ギノロットと辺境タルシス 2

 募集用紙には定形があり、いくつかの項目を満たせば、すぐに仲間を募る掲示用紙になる。ブレロがギルド名やら人数やら目的やら何やらをスラスラ書き込んでいき、それから冒険者ギルドの事務員が内容をざっと検査して、承認の印が押される。鳥が一枚の葉をくわえて飛び立とうとする、希望に満ちた印だった。
 掲示板は早起きのできる冒険者志望が何人かいて、長身のブレロは彼らを掻き分け、空いたスペースに自分の紙をピンで留めた。すると当然みなの目線が集まり、要領のよい者がすぐに「ねえ」とブレロの袖を引っ張った。振り向くと声の主は、ひと目で学生とわかる制服に身を包んでいた。
「私、メディックなの。あなたのところにどうかしら?」
 そういったことも含めて募集用紙を読めばきちんと書いてあるのだが、こんなことは先に声かけした者勝ちだとブレロはわかっている。なので迷わず頷いて、
「もちろん歓迎するよ。メディックは貴重な存在だ」
 旅に治療役はぜひ必要だ、願ってもない。人の群れから数歩離れて見守っていたギノロットとワイヨールは、明るく顔を見合わせた。
「まだ学生だから、見習いなの。それでもいい?」
「俺たちだって学生上がりみたいなものさ。気を使わなくてもいいと思わないか?」
 遠慮がちな声色に、ブレロは笑って握手を求める。女学生は差し出された手の呆気なさに目を丸くして、それから得心して微笑み、手を取った。
「よかった! もっと手間取るかと思っちゃったわ」
「なんの。君の勢いのよさは買いだよ」
 と言って、見守っていた仲間二人のほうを見た。ワイヨールが手を振って応じ、ギノロットもそれへ倣い、女学生はブレロとともに合流した。
 メディックは名をマドカと言った。柔らかそうな亜麻色の髪の両脇を、ちょこんと赤いリボンでつまんでいる。いかにも賢そうに眉が濃く、まつ毛の長いこの乙女は医学学校に通う学生で、現場の経験はまだなかった。しかし、
「ちゃ〜んと成績優秀なのよ。でも経験がないと、知識だけじゃ物足りなくて、待っていられなくって」
 何しろ冒険者はみな魔物と喧嘩して怪我をこしらえるわ、知らない食べ物も平気で食べるわの恐れ知らずときている。医術師にするとどんな救急対応も冒険の数だけ経験できた。ならば冒険者になってみればいいとなるのは、タルシスでは自然な成り行きだった。しかも世界樹の街の学校は理解があるもので、冒険者になると放校処分となるまでの期間を、ほんの二年伸ばしてくれる。
 ギノロットが、当然の疑問を呈した。
「それって、俺たち実験台ってこと?」
「そう言っちゃうと、そうね。……ちゃんとした衛生担当、探す?」
 だがしかし、ちゃんとした衛生担当とやらは、冒険者にはならないだろう――マドカの口ぶりと二人の仲間の顔色を見て、ギノロットは察した。拒否感がないわけではないが、専門知識を持つ者は必要だ。さもなくば自力で何とかしなくてはいけない。複雑な心境を理解してか、マドカは「そうよね」と頷く。
「でも大丈夫よ。あなたの皮膚の下にも何があるのか、し〜っかりわかってるわ。安心して」
 血管が見やすくてとっても素敵ね、とギノロットの腕を指さして笑うので、さされたほうは引き攣ったが、その引き攣りを見てブレロが喉の奥で笑った。
「いいさ、怪我して痛いよりも手当で痛いほうが、よっぽどマシじゃないか」
 そんなこんなを話しているうちに掲示板前は人垣ができるほど混み合ってきた。人が増えるにつれて四人はじわりじわりと後ろへ流されていたのであるが、人垣の最後列を眺めながら、ギノロットはふと一人の人物に気がついた。馬の尻尾のように髪を結った少女が、掲示板が見えないで、一生懸命背伸びしている。緋色リボンのひょこりひょこり揺れるのをギノロットが見つめていると、やがて他の三人も、少女に気がついた。
「……ちっこいと大変だな」
 ギノロットにとっては、誰に聞かせるわけでもなく一人つぶやいただけだった。ただ彼の顎あたりの身長の少女を見て、些細に感じた程度だった。しかしポニーテールの少女は振り向いて、ギノロットは面食らった。ずいぶんムッとした表情を浮かべていたので、慌てて首を振る。
「悪ィ、変なつもりで言ったんじゃなかった。ただ冒険者にしちゃ、ちっこいと思って」
 ギノロットの言い訳は二度目のうっかりにしかならず、ポニーテールはまなじりを吊り上げた
「よく言われるので、結構です。邪魔くさくて、すみません」
 明らかに険を含んだ言い方で、少女は返してきた。しかし機転が利くのが聞き役に回っていたワイヨールだった。
「でもさ、きみ、すごく手足が長いねぇ」
「あらまあ、本当」
 少女の不機嫌を収めたかったのもあり、マドカも唇に微笑みを浮かべた。
「これからとっても伸びそうね。小さいのなんか一瞬よ」
「きみ、きっと弓使いでしょ。腰のところに矢筒の擦れた跡があるから」
「……ずいぶんよく見てるな!」
 ブレロは感心したが、言われた少女も驚いたような顔をして、自ら跡を探した。ワイヨールが正しく言い当てたことは明らかだった。
「観察は仕事の一環だからね。ねぇ、きみはスナイパー? ダンサーとは雰囲気が違うね、もっとピリッとしてるもの」
 ポニーテールの少女は向き直り、戸惑いながら「まだ志望なだけですけど」と答えて、さらに続けた。
「ハンターで生活はできるけど、もっとお金が欲しいと思って」
「へえ、それって独立してるってことか? すごいな、上昇志向のあるプロだ! なあ君の名前は?」
 ブレロが抜け目なく尋ねると、驚きっぱなしの少女はやや目を泳がせて、柳眉を和らげてからおもむろに名乗った。小首を傾げるのと同時にリボンの尻尾が左右に振れた。
「わたし……レリッシュです。スナイパー、探していますか」
「もちろん。君を探してた!」
 大げさなブレロの台詞にポニーテールのレリッシュは小さく笑い、互いに差し出した手を握り返した。しかし握手がギノロットの番になったとき、彼女の微笑みは露骨に固くなった。
「ソードマンのギノロット。……ごめんってば」
「小さくても誤射なんてしませんから、ご心配なく」
 レリッシュは手を取り返してくれたが、一方で勝ち気な目の光に、ギノロットは息を呑んだ。これ以上何か気に触ることを言ったら、この先本当に撃たれるかもしれない、と少し想像してしまったのだった。

 彼ら五人はそうして、『銀の稲穂団』となった。南洋生まれで字を知らず姓も持たないギノロットの名の綴りを四人で考えてやり、銀の稲穂団は書類上、タルシス公認のギルドとして登録された。
 それから銀の稲穂団がギルドの勧めに従って統治院を訪ね、ミッションに挑戦したい旨を伝えると、辺境伯は冒険者を志望する若者たちがどのような面構えであるのか、興味があるのだという。五人はなんと奥へと通されてしまった。
 案内の兵士に連れられてぞろぞろ廊下をゆくとやがて光のまぶしい中庭があり、一人の男と犬がいた。遠目から見ても堂々たる身なりの男は、すぐに『辺境伯』の位を想起させるものがあったし、何より、統治院で犬と戯れてよい者はごく限られているだろう。辺境伯がボールを放り投げては白い犬がすっ飛んで行き、拾って戻り、口から離して声高くひとつ吠える……そんなことを主と犬は繰り返していたが、タルシスの統治を司るその男は、複数の足音が近づいたことに気づくと、小さな犬を抱き上げて振り向く。
「ふむ。諸君が冒険者になりたい若者たちかね」
 豊かな茶の髪と髭を蓄えた壮年の男だった。吹いた風が裏庭の草木をざわめかせ、同時に辺境伯の目が、品定めするように左右に動いた。抜け目なさそうな、そして考えの図りきれぬ目つきに、『若者たち』は少したじろいだ。
 辺境伯はミッションの意義の説明を始めた。
 世界樹を目指そうとする者は山ほどいるが、辺境のタルシスとあっては人が何より大切な資源。若い命となれば尚のこと、全員の挑戦を認めてやるわけにはいかない。世界樹を目指そうとする者は多くても、そうした者の中には勇気と蛮勇を履き違えていることがある。統治院はその目利き役として、資格ある者を選り分けるのが肝要なのだ――と、そこまで言うと辺境伯は腕の中の犬の毛並みを撫で、口髭を片方だけ器用に持ち上げにやりと笑った。
「諸君はまず、私に実力を示さなければならん。だが……君は、不服かね」
 問われたレリッシュに向かって、一斉に四人の視線が集まった。細身の少女の体は明らかなる苛立ちで拳が握られ、への字に曲がった唇から、今にも不平が零れ落ちる――と思われた途端、隣にいたマドカが彼女の口を塞いで、首を振った。レリッシュは反射的に引き剥がそうとしたが、やがて手をそっと下ろして、瞬きで頷く。が、その琥珀色の目はやはり挑戦的な光を失わずに辺境伯へと翻る。言葉にせずともみなにわかった。
 髭をしごきながら様子を見ていた辺境伯は破顔する。
「君の物怖じしない態度、実にいいな! ――しかし私は統治者だ。何ごとも見過ごしにするわけにはいかん。試練を以って冒険者足るか、公正に図るのが私の仕事だ……このタルシスで冒険者になりたいのならば我がミッションを受け、『虹翼の欠片』を手に入れたまえ。君たち冒険者が空を駆るための気球艇、その最も欠くべからぬ一品を、君たちの手で見つけ出すのだ――冒険者として絶好のミッションだと思わんかね?」

 ミッションの前金として与えられた五〇〇エンによって数日後、準備万端整った銀の稲穂団は、タルシスの外れにある森の廃鉱を訪れた。街の門からさほど離れてもいない廃鉱は、生まれも育ちもタルシスだった者からすると、一度くらいは耳にしたことがあるという。もちろん意味なく立ち寄る場所ではない。人の気配のない場所だ。
 兵に引率されて徒歩で行く間、彼らは装備の重さに慣れたり、一人ひとりのペースを確認して、虹翼の欠片を探す前のよい準備運動になった。実はワイヨールやマドカは少々ピクニックのような気になって、お弁当があればよかったのに、などと思っていたが、音の鳴る武具でいかつく装備を固めた仲間が三人もいると、それはふざけた考えだとすぐにわかった。一方でギノロットとブレロは後ろに控えるレリッシュたちの防御がいかに頼りなげなことかを目で見て知った。もしも鋭い爪や牙で襲われたら、ひとたまりもないだろう。そうして彼らが探索の初歩の初歩を知り、小一時間は歩いただろうか。
 辿り着いた廃鉱は寂れており、すっかり緑に侵襲されていた。雑草から蔦から未熟な雑木から、いろいろな植物が入り乱れては生き残ろうとしている。人の手が入らぬ場所はあっという間に自然に帰ってゆく。かつて人間が出入りしていた痕跡は、不自然に開けた道くらいだろうか。
 しかしここは廃鉱となって久しく、確かに魔物の棲家となっている場所だ。数日前、ミッションに挑もうとした冒険者志望の若者たちが、返り討ちに遭って敗走したことも聞かされた。緊張の面持ちでいたギノロットとブレロとレリッシュがますます硬い表情になり、ワイヨールとマドカの気も引き締まる。
 兵士とは入り口で別れ、五人はいよいよ廃鉱探索に踏み出した。歩きながらマドカが、緊張する胸を押さえて言う。
「魔物のいる場所なんて初めて……慎重に行きましょうね」
「俺、初めてじゃねーよ」
 ギノロットがけろりと返事して、腰に佩いた剣を軽く叩いた。彼の旅装のときから下げていた剣である。
「旅してると、武器のいる話あったから。油断してるわけじゃねーけど」
 例えば人家の近くに出没した害獣の退治には武器が必要だった。鞘に左手を添えて慣れた手つきですらりと抜いてみせた剣は、使い込まれた痕がある――ギノロットが世界樹の噂を聞いたのは、そんな仕事を始めてからだった。
「だから習ってねーけど、魔物の相手はできる」
「へえ、すごいね。実は素人だとばっかり思ってたんだ。ギノは聞いてみると意外な一面があって面白っ――」
 と言いかけたところでワイヨールの口は止まった。前を歩いていたブレロとギノロットが素早く振り向き、そばにいたマドカとレリッシュの視線も集中した。中でもレリッシュはすでに矢をつがえて敵襲に構えて、ワイヨールは慌てて手を振って見せる。
「違う違う違う! なんか足の裏でムギュッと……何だこれ?」
 ブーツで踏みつけた固いものを拾うと、それは小傷の目立つ銀色のペンダントだった。蓋に尾羽根の長い鷲の模様が刻まれた、中に肖像画をしまう首飾りである。
「変なところに変なものがあるわねえ?」
 マドカの間延びした声は興味津々といった風で、ワイヨールと二人してしげしげと見つめた。
「ねえ……中、誰かしら」
「開けちゃいますか、やっぱり?」
「開けちゃいましょ、もちろん」
「ですよねぇ! 偶然開いちゃう体でたまたま見ちゃっ――」
 ワイヨールが蓋に手をかけた瞬間だった。藪が派手に踏みしだかれる音に警戒のレリッシュが素早く矢を手に向き直ると、しかしそこに見えたのは魔物の影ではなかった。銀髪と赤茶の目をした人間の男ではないか! 証拠に、苦笑の色した、ちゃんとした人の声でしゃべった。
「悪いんだけどそれは、そのままにしてくれないかな。人に見せるにはちょっと恥ずかしいものでね」
 左肩に大きな長い袋を背負った人物は、使い込まれた傷まみれの革鎧姿をしていたが、何よりもその雰囲気だった。野暮ったいくしゃくしゃの銀髪と無精髭の男は、だが引き締まった身体をしており、ひと目で冒険者だと分かるぴりりとしたものがある。が、どこかしら眠たげな錆声は、倦んだような空気をあたりに満たした。
 身構えたギノロットとブレロは正体にほっと溜め息をつく。ワイヨールからペンダントを受け取ると、彼は安心したように笑って鎖を手に巻きつけ、握り込んだ。
「ありがとう、ずいぶん探してたんだ。もう見つからないかと思っちゃってたよ。……君ら、ひょっとして虹翼の欠片を探しに来た冒険者かな。それならこの奥だよ。泉の前あたりにあるんだ。探してごらん」
「よくご存知ですね」
 気さくで饒舌な話しぶりに、レリッシュは一人頑なな疑いの眼差しを向ける。すでに矢を下ろしていたが、何かあればすぐにでも撃ち放つ用意がある――棄てられた鉱山をたった一人でうろつく者があったなら、怪しまぬわけにはいかない。統治院でレリッシュを諌めたマドカさえ、肩にかかった鞄の帯を握りしめ、じっと何も言わない。だが男は銀の稲穂団の怪しむ表情などまるで気にしないかのように、えへら、と頬を緩ませた。
「そりゃあ、あれをここで見つけたのは俺だもん。詳しいのもわけないだろ?」
 彼が自らをワールウィンドと名乗った。冒険者によくある通り名で、『神出鬼没だ』とあだ名をつけられ定着してしまったのだという。うっかり魔物と勘違いしてしまった銀の稲穂団はみな納得した。迷宮で初の遭遇が魔物ではなく人間とは思っていなかったのだから、これを神出鬼没と言わずして何であろう!
 あの中庭で話す辺境伯とワールウィンドの姿は、すぐに想像がついた。その雰囲気は冒険者として辺境伯の前に立つには、まさにちょうどぴったり収まりがついた。怪しげな風体の男とさえ当然のやり取りを交わす辺境伯の、油断ならぬ微笑の髭も思い浮かんだ。
 多勢にたじろぎもしないワールウィンドは、ふと思いついたように懐から一枚の羊皮紙を取り出して、レリッシュに手渡した。不思議な畳み方をしてある大振りのハンカチのようなそれを、レリッシュはどう広げるのかわからずひっくり返すので、ギノロットが「貸してみ」と取り上げパッと斜めに広げた。
「なー、これ何の地図? まだ途中だ」
 方眼のつけられた羊皮紙には、鉛筆の荒っぽい下書きの線が引かれている。むくれるレリッシュをよそに、地図から目を上げてギノロットが尋ねた。どう見ても素人の反応をした二人をにやにや眺めながら、ワールウィンドは腕を広げた。
「このあたりのさ! その赤いバツ印が欠片の取れる場所。俺たちのいるのは、このへん。ほら、こっちが入り口だろ? ――迷宮の地図は冒険者には必須だぜ。ちょうどいい、それあげるから、書き方覚えていきなよ」
 初心者ギルド・銀の稲穂団は雁首揃えて地図書きを習った。方眼つきの羊皮紙の得方から、下書きの取り方。怪しんだり苦労させられた場所には確実にメモをつけなくてはいけない。魔物の生態と迷宮の構造には関わりが多いから忘れてはならない。街に戻れば清書の作業だ。立ち入れる場所とそうでない場所に明確に線を引き、色で分ける。引っかかった罠があれば、その考察も必要だ。さらには地図から派生して、魔物の情報を図鑑にしてまとめたりする手間も惜しんではいけない。見つけた鉱石や草木や魔物から得られた素材だって、記録をつけておかないとあっという間にうろ覚えになってしまう。道具も武具も冒険者の命綱にも関わらずだ! ――思いの他大切な話を急に山ほど教えられ、初心者五人は目を白黒させた。
「あはは、大丈夫大丈夫、俺にだって描けるんだから。すーぐ慣れるって。……そういうわけで例えば、俺が作ったここの地図が、これさ」
 ワールウィンドが反対側から取り出したのは、手垢で少し汚れた羊皮紙だった。広げてみせると丁寧に定規を使って描かれたインク書きの地図が現れ、赤や青や黄色その他、目がちらつかない最小限の色を使って何かが細かく記録されている。ある所からは線を引っ張って覚え書きがされており、また手製の図鑑のページへ誘導していた。
 が、見せてくれたのはほんの一瞬、意地悪そうに微笑むワールウィンドはすぐにそれを閉じてしまい、銀の稲穂団は彼の思惑通り残念な声を上げた。
「もちろん描き方は一つじゃないぜ。その地図だって、新しい描き方を探してる最中だったから。君らに一番いい地図を作りなよ」
 じゃあ、捜し物も見つかったことだし、これで。右手を振り振り、ワールウィンドは去っていく。銀の稲穂団は丁寧に礼を告げて、再び虹翼の欠片の探索に乗り出した。
 書きかけの地図は咄嗟に手が空かなくても問題のないマドカが預かって、下書きの担当になった。道中気づいたことがあれば、どんなことでも忌憚なく話すべし、と取り決めて、途端に冒険の雰囲気が増して、彼らは胸を高鳴らせながら、うろうろと虹翼の欠片を探し求める。しかし縄張りを侵されて憤る、巨大なバッタが狙いを定めていることには、まだ気づいていない――。