FF6
- すぐ隣に恋人が眠っている。[1143字 約2分]
すぐ隣に恋人が眠っている。くうくうと、あどけない表情を晒しながら。 白く波打つベッドに横たわり、夢か現か知ることもか
- ケーキ[1623字 約3分]
「そこまで言うことないじゃない!」 とうとう、セリスの堪忍袋の緒が切れた。彼女が朝から懸命になって完成させたケーキに向
- うたかた[3501字 約7分]
ロックはゆっくりと浅い眠りから抜け出した。ほんの少しうとうとしているだけだと思っていたのに、どうやら長いこと意識を手放
- 宝石箱の天井[4124字 約8分]
世界が茜色から解放された日の夜、宵闇の中、ロックとセリスは何を語るでもなく星を眺めていた。それまでは舞い上がった塵と埃
- くらやみ[3166字 約6分]
真実をなくしてしまった。 失くしてしまった。 無くしてしまった。 亡くしてしまった。 真実をなくしてしまった。
- アンカー[1094字 約2分]
お帰りなさい、の声を聞くと、根無し草だった俺でもどうして、心から安心してしまう。ただ、お帰りの言葉と一緒に、お前が笑っ
- 木枯らし[2482字 約4分]
何も抱え込まない旅は久々だった。 例えば暗闇の底の自責の念に。例えば背筋の焼けつく任務に。例えば後ろめたい依頼に。自
- とまどい[1753字 約3分]
「あら、そう、誕生日だったの」 開口一番、セリスの言葉はそれだった。ロックの誕生日が数日過ぎて、ようやく『過ぎた』と知
- Get ready, 3, 2, 1...[967字 約1分]
「——敵襲! セリス!」 エドガーの張った声が私の耳を打つ。反射的に右手は柄を握り、振り向きざまそれを切りつけ——浅い
- tender[2359字 約4分]
目が覚めても、ぼんやりした。厚手のカーテンをも突き抜ける砂漠の日差しのせいで横たわっているだけでまぶしく、ついに私は目
- 悲しいブレイクスルー[3386字 約6分]
棲むところよりも酒場が好きだ。人のざわめきと喧騒をBGMに飲み食いするのは、人の間に生きてきた俺にとってごく自然で、心
- テンプテイション[1280字 約2分]
夜の闇の中で、私たちはまんじりともせずただ座り込んでいる。あたりはむせ返りそうなほど甘ったるい香りで満たされているけれ
- 突風の日に[774字 約1分]
旅立つための場所はここだ、と思った。春の突風が両脇のモミをわさわさと揺すり立てたとき、私は決心して背後を振り返った。
- ラヴァンデュラ[1331字 約2分]
セリスがバスタブに垂らしたのは、マッシュが誕生日の品に贈ってくれたラベンダーの香油だった。香油は身につけたり、寝具に染
- 決意の序章[566字 約1分]
もう一度この崖に来るとは思いもよりませんでした。この、冷たい風が吹きすさぶ悲しいところに立とうとは。私は寒いところがあ
- don't cry[1090字 約2分]
セリスはティーケトルを傾けた。白鳥のように緩い形の首を持つケトルからは熱々に沸いたお湯が流れ出て、それをポットが受け止
- 厳寒に光射し[462字 約0分]
「あなたは宝物をたくさん持っているのね……」 濃紺から暁の朱へ、東雲の空が鮮やかに光射したとき、セリスは感嘆して呟いた
- 泥濘[3073字 約6分]
洞窟の天井は崩落したのかぱっくりと開いていて、青空を切り取って陽光を降らせてくる。それまでの道程が薄暗く不安をかき立て
- 氷細工の娘[5014字 約10分]
まだ彼女が少女だった頃の事になる。あの子は暴力というものが何か知りもしない、頑是無くいとけない子供だった。そして我が魔
- テンショウギ[5681字 約11分]
それは皆でストラゴスの書斎を漁っていたときのことだ。 三闘神に関する資料を求めて、かれこれ小一時間は埃っぽい本棚を引
ゆめついののち
ED直後の各キャラクターの掌編群。
- ロック[1040字 約2分]
仲間達が騒いでいる隙を突いて、ロックは家を抜け出した。世界がまた美しくなったなら、必ずそうしようと心密かに決めていたこ
- エドガー[1379字 約2分]
宵の口の空に淡く浮く爪月を見つけた。空の青さに未だ飲まれているそれは、運が良くなければ気づかなかっただろう。 自由を
- マッシュ[1467字 約2分]
兄とは双子の兄弟だが、あまり似ているとは思わない。小さい頃から体格も性格も違った。しっかり者の兄に対して弟の自分は大雑
- シャドウ[1675字 約3分]
全身を走る鋭い痛みと頬を舐める暖かな感触で、彼は目を覚ました。過去に何度か体験済みの目覚めだった……恐る恐る開いた視界
- カイエン[1269字 約2分]
騙してしまって申し訳なかった――カイエンはかの娘の恋人であった男の墓に手を合わせ、静かに目を閉じる。手向けてやる花も供
- セリス[1485字 約2分]
セリスが一日を終える前の日課である剣の手入れをしていると、苦笑の声が彼女の背中にぶつかった。弾かれたように振り返ってみ
- セッツァー[1505字 約3分]
「ねえ、本当にこの船、飛ぶの?」「飛ぶぜ」 会話は突然に始まり、また続かずに終わった。 セッツァーは子供にあまり興
- ストラゴス[1821字 約3分]
魔法をなくしたストラゴス老は、若者達の祝宴から少し早く引き上げて、ファルコンの簡易な寝台に腰掛けた。若い衆に混じって騒
- ゴゴ[1160字 約2分]
ゴゴは人知れずモブリズの村を立ち去っていた。世界を救うという真似事を終えた彼には、もはや『彼ら』の輪の中にいる理由がな